賃貸併用住宅のメリットの一つとして、返済期間の長い低金利の住宅ローンで投資用物件として購入できるという点があります。
そのために初期費用を抑えて不動産投資を始めたいと思う人にとっては、大変始めやすい投資手法と言えるでしょう。
しかし賃貸併用住宅は自宅とアパートが一体化しているという変わった構造を持つ住宅です。それだけに大家と入居者、互いのプライバシーに配慮しなければいけないことも多いのです。特に騒音面に関しては、大家として入居者からのクレームを受けることも多いです。
そこで賃貸併用住宅内で生活音トラブルを発生させないためには、どういった点に心がければいいのかを考えてみましょう。
なぜ賃貸併用住宅は騒音問題がおきやすいのか
まず賃貸併用住宅はなぜ問題が起きやすいのでしょうか。賃貸併用住宅では主に一階がアパートなどの賃貸スペース、そして2階以上が大家の住宅部分です。
2階から1階への騒音問題で、一番大きなものは足音です。大家の家庭に子供がいる場合、子供が部屋の中で駆け回ったり暴れたりすると、その振動が1階の住人の部屋に伝わって騒音などが発生し、住人にとってストレスになりやすいのです。
また赤ちゃんがいる場合は、昼夜を問わずに泣き声を出すことが多いので、それがクレームになることもあります。
大家は騒音を起こさないように努めても、小さな赤ちゃんや小さな子供はなかなか自制が利かないため)、騒音を無くすことが難しいのです。
また賃貸併用住宅の場合、RC造で作られていることは少ないです。基本的には木造住宅が多いので、一般的なマンションよりも振動や音が伝わりやすいのです。
対応しないとどうなる
しかし当然ながら入居者にとって騒音は大変なストレスになります。騒音の発生に対応しないと入居者は「大家は薄情だ。苦情に対応しないのであれば、こんなところに住んでいられない」と感じて退去してしまうでしょう。
また人間はストレスを感じている状態だと、些細なイライラでも一気に大きな問題に発展しやすくなります。大家から感じた騒音の問題だけではなく、隣室の住人による小さな音にも敏感に反応しやすくなり、隣人と喧嘩(が起きて両者とも退去しまうこともあり得ます。
そうすると部屋の稼働率が大幅に下がってしまいますし、アパートの悪評も広がってしまいます。
そうならないためには、まず騒音が起きないような対策をすること。また騒音によるクレームが発生した後に速やかに対応することを心がけましょう。
具体的な対応策は
では具体的にはどのような対応をしていけば良いのでしょうか。まず最も大きなストレスとなる足音による振動問題です。
これは2階のフロア全体に、防振マットを敷き詰めるようにしましょう。ウレタンやゴムでできた防振マットを敷けば下の階に伝わる振動を大幅にカットできます。
子供部屋によく敷くような、ウレタンで組み合わせができるカラフルなパネルマットでも効果はありますし、念を押すのであれば硬いゴムでできた防振マットをリビングや子供部屋、そして廊下などに敷くと良いでしょう。
費用的にはウレタン製のマットでしたら6畳で1万円ほど、硬いゴム製のマットでしたらその2倍から3倍といったところでしょう。ウレタン製のマットであれば子供の生活ペースにすべて敷き詰めたとしても5万円以内に抑えることが可能です。1ヶ月の家賃程度の費用で防振対策ができるのですからコストパフォーマンスは悪くないでしょう。
次に考えたいのは子供の発する大声や赤ちゃんの泣き声などの防音対策です。
一番有効なのは窓を二重窓にすることです。二重窓にすれば防音対策になるだけではなく断熱性もアップするので、家の気密性が大幅に向上して快適に過ごせるようになるメリットもあります。
ただし最初から二重窓にしていない家が、後から二重窓にすると数十万円の工事費用がかかります。そう簡単に費用を捻出出来ないかもしれません。
そんな時は防音カーテンを入れてみましょう。防音カーテンは音を吸収する素材でできており、また断熱性や遮光性が高いものが多いです。リビングの窓につけるだけの大きさでしたら2万円から3万円程度。他の部屋に全部つけたとしても10万円もかからないでしょう。
いきなり二重窓にするのが難しいという場合はまずは防音カーテンを導入してみてはいかがでしょうか。またガラスに貼るシートなども一定の防音機能を持ちます。
もちろん基本的な方針として、できるだけ騒音を起こさないように気をつけなければいけません。特に家の中に色々な人が住んでいるということは、それぞれの生活時間帯が違ってくるのが当たり前です。
2階だけではなく3階がある賃貸併用住宅でしたら、子供を遊ばせる部屋は3階にしたり、2階は寝室や大人の居住スペースにして、3階をリビングにするなどの間取りの工夫を考えてみましょう。
そして実は最も効果的な対策が、入居者とコミュニケーションをとることです。入居者が入ってきた時に「家は子供がいるのでご迷惑をおかけするかもしれません」とあらかじめ伝えておき、そして子供が騒いでしまった後は、謝罪の粗品を郵便受けに入れておきましょう。
入居者更新のタイミングが近づいてきたら感謝の言葉と、これまでの騒音で迷惑をかけたことによる謝罪の意を一緒に伝えて、お願いしてみましょう。こういった日頃の小さな配慮の積み重ねが、入居者の不満を和らげることにもつながります。
賃貸併用住宅は大家との距離が物理的に近いだけでなく、精神的な距離も近いというのが特徴の一つです。
その距離の近さを有効に活かすためには、相手の負担にならない程度にコミュニケーションをとることを考えてみてはいかがでしょうか。
これから賃貸併用住宅を購入する人は
一方でこれから賃貸併用住宅を購入するという人は、あらかじめ防音対策がしっかり施されているのかを確認してから購入した方が良いでしょう。チェックしておきたいポイントとしては以下のようなものが挙げられます。
(1)大家の居住スペースが1階になっている物件
賃貸併用住宅というと一般的には2階以上が大家の家になっています。しかし逆の発想で大家の家を1階にしている家ならば、足音が2階など上のフロアに響くことがないので騒音が伝わりにくいです。
また賃貸物件は一般的には1階より2階、2階より3階の方が人気がありますから、入居率を上げるという意味でも、実は大家の家は1階にすべきだとも言えるのです。
(2)二重床など防音対策を行う
もし新築物件を建てる際に大家の家を2階以上にするのであれば、1階と2階の間を二重床にしましょう。
二重床は1階の天井と2階の床の間に空間を設け、そこで騒音を伝わらないようにする仕組みになっています。マンションでは一般的な作りですし、二重床になっていると床の張替えやメンテナンスのしやすさが特徴です。
その分費用もかかってしまいますが設計段階で盛り込めば、後々付け加えるよりもコストは掛かりませんし、結果的には防音のための費用が安く済みます。
(3)中古物件を探す時は防音対策済みのものを選ぶ
中古の賃貸併用住宅を選ぶときには、どれだけ防音対策が行われているかを確認してから物件を購入しましょう。やはり木造よりも鉄骨そしてRC造の方が防音性は高いです。実際に内覧する際は1階部分の防音性や防振性を見ておきましょう。2階で歩いたり、走ったりした際の音や振動の伝わり具合を確認します。
その上で音などがそれほど気にならないのであれば購入候補にしても良いでしょうし、対策してもなかなか防音性の確保が難しいという物件は購入しない方が良いです。
建物の構造や2重窓などの対策、そして壁の厚さなども含めてしっかり建物の性能を売主や不動産屋に確認して購入の是非を決定しましょう。