「不動産投資のため新築区分マンションをにサブリース契約(一括借上家賃保証)で購入する」
不動産投資で物件運営の形態の一つとしてサブリースがあります。よく不動産投資の営業マンがサブリース契約の家賃保証をメリットとしてアパートやマンションを販売するので聞いたことがある人も多いはず。
話題になった「かぼちゃの馬車」も女性専用シェアハウスをサブリース契約で行う運営形態になっていました。
よく話題になるサブリースですが1番気になるのは「結局サブリースってやったほうがいいの?」ってことですよね。
不動産運用上のメリットデメリット、また問題点や疑問点と合わせて説明します。
サブリース契約とは
サブリース契約とは「自分の購入した物件をサブリース業者が一括で借り上げし、業者が入居者の募集をする」賃貸借契約です。契約の過程で業者が一度物件を借りているため、空き室が出たとしても物件の所有者に必ず家賃が支払われるメリットがあります。
自分の所有物件→不動産業者(サブリース業者)に貸し出し→入居者に部屋を貸す
【補足】
厳密には、自分からサブリース業者に貸し出すこと自体はマスターリースといい、サブリース業者が、借りた物件を入居者に対して課す出しことをサブリースと言います。
ただし、一般的にはオーナーが直接物件を運営せずサブリース業者に物件をまるごと貸し出しし、運営を任せながら家賃を受け取っていく契約を「サブリース」と呼ぶことが多いです。(不動産投資セミナーや不動会社の営業マンが話す「サブリース(一括借上家賃保証)」)
サブリース契約の流れ
サブリース契約の流れは以下です。
- 自分が所有する物件をサブリース業務を請け負っている不動産会社に貸し出す
- サブリース業者は自分たちで満室まで客付けをして家賃収入を得られる体制を整え
- サブリース業者が実際に物件の客付けや管理やクレーム対応をする
- サブリース業者は家賃収入の7割から9割を大家に支払い、残りの1割から3割を管理手数料として自社の収入にする
上記は既存の物件をサブリースに転用する例ですが、最近は不動産投資希望者にサブリース会社側から提案するケースが増えています。
サブリース業者が不動産投資を始めたい人(土地の地主、土地を購入希望)の建物設計や施工、管理運営まで一括して請け負うものです。物件施工から関わることで、サブリース業者は工事費そして管理手数料と二重の収入を得れるメリットがあります。
また不動会社がサブリース契約を前提としたアパートやマンションを開発してサブリースの家賃保証をウリに販売するケースも多いです。
変則的な運用ですが、既存物件の貸し出しで集客力が見込めない場合は、家賃収入からリフォーム代を捻出してサブリース業者が物件をリフォーム。一定期間の家賃収入はリフォーム代を差し引いてオーナーに支払い、リフォーム代を完済したら本来の家賃収入をオーナーが得られるというシステムもあります。
サブリース契約の実例
では具体的にいくつかサブリース契約の実例を見てみましょう。
サブリース業者がリフォームをしてサブリースする例
以下は大手電鉄系の不動産会社のサブリース契約例です。
- 空室オーナーが賃貸物件をサブリース業者に貸し出す
- サブリース業者は5年間の家賃収入を計算し、その中からリフォーム代を捻出する
- リフォームを施した上で貸しに出す。(家賃の一部をリフォーム代として回収)
- サブリース5年後から家賃収入の大半が大家のものになる。またこのタイミングで物件の状態や周囲の賃貸需要、強豪物件を見ながら家賃の見直しを図る。
このサブリース契約は、物件再生のリフォーム費用を支払わなくていいというメリットがあります。5年の間の家賃収入は少なくなりますが、リフォームで物件寿命を延ばせて既存物件の集客力をでアップさせられます。
設備不満や内装不満原因の空き室リスクを減らしたいというオーナーに向いています。
新築物件をサブリース業者が開発してサブリースする例
新築物件をサブリース業者が開発してサブリースする例の流れです。
- 空き土地に、大きさや条件に応じたアパートの建築プランを提示
- 設計から施工まで全てサブリース業者が一括で行いアパートを建てる
- 建物が建ったらオーナーと業者間で30年間など長期家賃保証契約を結び、客付及びアパートの運営を行う
- オーナーは家賃保証を受け、定額家賃が毎月振り込まれる
- 2年、5年、10年など規定のタイミングで契約更新(家賃の見直し)がある
なお10年や15年に一度の大規模修繕費はオーナーの負担になります。
サブリース契約を結ぶことによるオーナーのメリット
では具体的にサブリース契約を結ぶと、オーナーにはどんなメリットがあるでしょうか。
一括借上家賃保証。物件購入者の毎月の収入が保証される
まず確実な家賃収入が得られるという点が一番のメリットです。サブリース契約では空室の有無に関わらずオーナーの収入が保証される家賃収入保証があり、空室のリスク対策になります。
そのため多額の借入金でアパートを建てても、借入金以上の家賃収入が保証されていれば無理なく返済できます。
不動産物件の管理が不要になる
もう一つは管理の手間が全くかからない点です。サブリース契約の場合、客付や入居者との契約書。クレーム対応や修繕など全てサブリース業者が行ってくれます。
オーナーの業務はほぼサブリース業者との契約だけです。手間を掛けず不労所得を得ることができます。代わりに管理委託費として家賃総額の10%から30%の管理手数料を払う必要があります。
しかし確実な収入が得られて、かつ作業時間の負担も時間も心理的なプレッシャーも少ないとすれば、決して高い出費ではないでしょう。
サブリース契約のデメリット・リスク
一方で当然ながらサブリース契約にもデメリットやリスクが存在しています。それぞれ見ていきましょう。
契約更新による家賃の見直し
サブリース業者は投資家に長期の家賃保証を謳っていますが、契約期間ずっと同じ金額の家賃が支払われるわけではありません。2~10年おきの契約更新時にサブリース業者から家賃改定の連絡がきます。
不動産物件は経年劣化で家賃が低下することは避けられませんし、競合物件が増えたり周辺環境が変化したりすれば、家賃を下げて客付をしなければいけないこともあります。
当初の家賃収入ならば無理なくローンを返済できたというケースでも、入居率の悪化により家賃の減額を提示され、ローンが返済できなくなるケースもあります。
サブリースの契約更新(家賃改定要求)と契約破棄
物件オーナー側が契約更新の家賃値下げを受け入れられない場合は、交渉決裂となりサブリース業者との契約を破棄することになります。
その際に契約次第で違約金を支払う必要があったり、サブリース契約破棄後は、自分で物件管理(客付けや修繕、契約)の作業が必要です。
それまで不動産物件の運営経験がない人には大きな負担になるでしょう。また入居者の書類を業者が預かったままだと、契約更新がうまくいかないこともありますし、敷金などを持ち逃げされてしまうこともあります。
サブリースの建築費やリフォーム費の負担
サブリース業者は管理手数料以外にも、物件を建てる工事費、修繕時のリフォーム費も収入源としています。一般的にサブリース契約時の価格は必要な費用+利益上乗せであることが多いです。
不動産投資物件の運営経験があれば、相場より割高な工事費であることを見極めることができますが、素人では数字を鵜呑みにして高額な作業費を支払わざるを得ないケースも。
またサブリース業者との契約に「頻繁に修繕を行う、指定の業者を使う」などの契約が盛り込まれていると、一般的な相場より割高な工事を何度も強いられ、収益性を悪化させます。
サブリース業者の倒産
それほど頻繁に起こるものではありませんが、サブリース業者が倒産するリスクもあります。その場合預けていた敷金や入居者の書類などが紛失されてしまうこともありますし、当然ながら家賃保証親管理委託ができなくなるので新しいサブリース業者を見つけるか、自分で全て業務を担当しなければいけません。
サブリース契約で実際に起こっている問題点
サブリース契約ですが、NHKのクローズアップ現代でも取り上げられるなど、実は社会問題にもなっています。
では、なぜサブリース契約では不動産賃貸トラブルが発生しやすいのでしょうか。
不動産投資に対する知識のない人をターゲットにした営業を行っている
地主に対して相続税対策、老後の収入確保などといって、駅から離れた土地にアパートを建て、家賃収入を得ませんかと提案する不動産会社が多くいます。実際には地方では人口が減少し、土地余りとなっている時代です。アパートやマンションを建てたところで需要がそれほどあるわけではありません。
サブリース業者はまずアパートの建築費で収入を確保します。さらにアパートの運営をサブリースで行い収益を得るのですが、物件オーナーに不動産投資の知識がないのをいいことに契約内容を詳しく説明せず契約させたケースが多発しました。
- 数年おきに契約更新がある
- 契約更新時の家賃の値下げなどがある
- 更新時の値下げに応じない場合契約破棄になる
- 契約破棄した場合その後の物件管理(集客など)はオーナーがやる必要がある
さらに集客が難しくなってくると、家賃の値下げまたリフォームをしないと入居者が決まらないと伝え、高額なリフォーム費を支払わせていたのです。
オーナーがその契約を飲み込まないと一方的に解約を突きつけて高額な違約金を請求。オーナーは当初の保証された家賃収入でローンを返済することを前提としていたので、収入が減った結果、融資を返済できない問題が多発しています。
不動産投資の知識がある程度ある人ならば、自分の土地にアパートを建てても入居者は入らない、収入保証などいつか破綻すると想像できます。が、不動産投資に全く興味なかった未経験の素人は、地方に需要のないアパートを建てさせ続けられています。
特に土地が余っているエリアは過疎化したから土地が余ったのであって、この先人口が増えていく見込みが非常に薄く、賃貸物件の運営が困難でしょう。
「かぼちゃの馬車」運営問題。銀行と組んで高額な金利で賞賛の見込みが薄い物件の運営を行っていた
いま話題となっているのはスマートデイズ社による女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」の運営問題です。
スマートデイズ社では、女性向けシェアハウスかぼちゃの馬車の営業を、サラリーマンを中心とした不動産投資家に対し行っていました。
その内容はサブリース契約により家賃収入の80%を常にオーナーに対して支払う。その代わりオーナーは高金利なスルガ銀行の不動産投資ローンを使って物件購入を行う。
金利が高いが確実な家賃収入が見込めるので、ローン返済をしてもキャッシュが残る。つまり絶対に収入が増えるという内容でアプローチしていたのです。
また1億円屋2億円など高額な融資を受けるために、オーナーの収入やその他の属性を書類上で改ざんし、無理やり融資をつけていたという問題も明らかになっています。
しかしこのシェアハウスの実態は、シェアハウスなのにリビングがない、それなのに割高な家賃など、物件の魅力が低く入居率50%程度を確保するのがやっとであり、とても当初予想していた家賃収入を確保できませんでした。
そのためスマートデイズ社は、かぼちゃの馬車のオーナーに対し、一方的に毎月の支払額の値下げを要求。安定した収入が認めるからと高額な金利で、大金のローンを融資を受けた人達は、毎月のローン返済が出来なくなったと、スマートデイズ社を提訴する事態です。
サブリース契約は有用?危険?
現在起きている問題だけを見るとサブリース契約は大変危険に見えます。しかし結局何故サブリース契約で失敗をするかと言うと
- 物件を建てるエリアが本当に不動産賃貸需要があるのか
- 物件が入居者にとって魅力がある物件なのか
- 家賃値下げなど契約更新についての詳細情報をオーナーが把握していたか
要は不動産投資する側の知識・経験不足に起因します。
業者も不動産投資の知識が豊富な人間は対象にしません。なんとなく不動産投資は楽そう、管理も任せられるから自分たちの負担にならないと安易に考えてる人だけをターゲットにしているのです。
業者側に問題があるのは間違いないですが、オーナーも自分で不動産投資の勉強をし、物件の運営ノウハウを身につけるなど先行きに対する見通しが甘かったと言わざるを得ない点があります。
サブリースで失敗をする理由は、勉強不足でこれが一番の問題です。サブリース業者の中には悪質な会社もあり、お金や土地はある素人がカモられてるのです。
サブリースの確実な収入が見込める点、管理の手間がかからない点は自体は不動産投資上で大変大きなメリットです。収支計算・収入計画が立てやすく、次の物件を購入するプランも立てやすくなります。
サブリース契約前には、物件の需要があるエリアを見抜き、そこで10年20年に渡って確実に需要が見込める立地であれば、契約をしても問題ありません。それこそ不労所得として、自由になる時間も増え、不動産投資を拡大しやすくもなります。
不動産投資は簡単に儲かるものと思い込み、勉強を怠ることが一番の問題です。まずはいきなり物件を購入するのではなく、自身で勉強したりセミナーに参加して知識をつけることが先決です。
しっかりと不動産投資のノウハウを学び、自分なりの方針を立てましょう。