不動産投資を始めるには物件を購入しなければいけません。またその物件購入の流れの中では金融機関からの融資がほぼ必須になってきます。
そこで実際に物件を購入する時の流れ、そしてその中で融資はどれくらいの金額をどのタイミングで受ければいいのかなどを見てみましょう。
1.不動産会社への問い合わせ&内覧申し込み
まず不動産投資情報サイトや雑誌その他の情報源から物件を探します。その後物件を取り扱っている不動産屋に話を聞きます。
- 申込状況-既に問い合わせ&購入申し込み(買い付け)した人がいるのか
- 物件の内覧-内覧が可能か、内覧可能日
- 詳細な物件情報-ウェブサイトに掲載されている以外の細かい情報
物件の詳細を聞いてその物件が良いと思ったら内覧の依頼をします。現地に行くことで建物の状態(共通管理部分が綺麗か、築年数に対する建物の綺麗さ)や周辺環境(騒音、治安)など物件情報サイトや不動産屋だけでは分からないことを確認できます。
2.買い付け申し込みと見積もりの依頼
内覧の結果、物件購入の意思が固まったら不動産屋に買い付け申し込みをします。
- 不動産会社に買付の意思を伝える&買付申込書(買付証明書)をFAXで提出する
- 必要なら申込金を支払う
- 不動産会社に見積もりをもらう
不動産会社に買付の意思を伝える&買付申込書(買付証明書)をFAXで提出する
買付は買付申込書(買付証明書)を提出する必要があります。フォーマットは自分で用意するか仲介している不動産会社にもらいます。
買付は他の購入希望者と競合になるためスピード勝負です。そのため郵送でなくFAXで買付申込書をやりとりするのが一般的です。ただ売却の権利は売り主にあるため買付申込書は自分が購入できる権利を保証するものではありません。
なお融資を利用する場合は「ローン特約」を買付申込書に記載する必要があります。ローン特約が無い場合融資がNGになって購入の契約を破棄しても、手付金(別途契約に必要なお金)が返金されません。
必要なら申込金を支払う
自分を優先してもらうため申込金を支払うというケースもあります。申込金とは、「他に申し込みがあった場合に優先的に入居審査をしてもらう」などの目的で、不動産会社などに支払う金銭です。
申込金の金額は状況によって違いますが10万円前後が多いです。申込金は物件の購入ができなかった場合返却してもらえます。いかなる理由でも本人の希望があれば返却される金銭です。
不動産会社に見積もりをもらう
買い付け後は不動産屋に見積もりをもらい、最低限必要な金額を把握します。
この段階で他に購入者がいない場合は、価格交渉ができる可能性があります。何円まで下げてくれたら購入の意思を示すという指値交渉を行いましょう。ただし条件が良い中古物件の場合はまず競争になるので指値交渉で長期化するのは得策ではありません。指値交渉ができるのは自宅購入の時ぐらいです。
また不動産の購入は物件そのものの代金だけではなく、
・登録免許税
・不動産取得税
・固定資産税などの税金
・仲介手数料
・司法書士報酬
・火災保険代
といったその他もろもろの経費で中古物件の場合は10%近い諸経費が必要になります。
3.融資先の斡旋を受けるのか、探すのかを決める
不動産屋への買い付けと見積もり受領後は購入資金を自前で用意するか外部調達(融資)するか決めます。融資を受ける金融機関の探し方は2通りあります。
- 不動産会社に融資先の金融機関を紹介してもらう
- 自分で融資先の金融機関を探す
不動産屋斡旋の場合、不動産屋のマージンが含まれ金利が多少高くなりますが、不動産屋が購入者の事情説明を金融機関に対して行うので、融資審査面はスムーズに行きやすいです。
逆に自分で融資を受ける金融機関を探す場合は、過去融資を受けた経験が無ければ一から開拓となります。そのため審査に時間がかかり他の購入希望者に先に購入されてしまう可能性も。
そのため初心者は不動産屋が斡旋する金融機関を使った方がスムーズに購入できるでしょう。もちろん条件の良い金融機関のツテがあるなら自分で探すのもアリです。
融資における自己資金の割合
自己資金の必要額、割合ですが頭金0でも不動産物件が購入できるパターンもあります。ただしここで頭金を減らすことのメリット・デメリットについて考える必要があります。
- 物件価格と自分が受けられる融資額の比較
- フルローン、オーバーローンのリスク
物件価格が1,000万円程度なら融資を受けることができ、頭金無しで購入できることも。
物件価格が5,000万円を超える高額の場合、投資初心者の普通のサラリーマンではそもそも融資が受けられないこと方が多いです。
またフルローンとオーバーローンについても理解する必要があります。
フルローン
フルローンは物件価格のすべてを融資金でまかなうことです。一見自己資金が無くても購入できるので良さそうに見えますが「融資=ローン(借金)」です。融資は利子を付けて返却するため多く借りればその分トータルで支払う利子分も多くなります。また空き室や築年数による価値低下など不動産経営が悪化すれば「融資=ローン(借金)」が多いほど返済が困難になります。
オーバーローン
オーバーローンは2種類あります。
- 物件価格以上の融資を受ける
- ローン残高>物件価格となった場合
1つ目のオーバーローンは物件価格以上の融資を受けることです。先のフルローンの頭金0どころか借りる額のほうが上回るパターンです。ただ基本的にオーバーローンは金融機関は受け付けてくれません。市場価格が1億円を超えるのに、たまたま運良く6,000万円で購入できそう、という場合はオーバーローンを検討してくれることもあります。ただこれはかなりまれな例で、投資初心者はフルローンやオーバーローンには縁がありません。
2つ目のオーバーローンはローン残高>物件価格となった場合です。この時物件を売っても借金が残ります。ローン残高>物件価格でも一般的な住宅ローンなら審査次第で物件を売却できる可能性があります。ただし、アパートローン(不動産投資ローン)の場合ローン残高>物件価格なら返済手段を確保するまで売却不可です。
このオーバーローンの問題は「不動産経営が赤字のため物件を手放したい。でもオーバーローンだから赤字が出続けようとも売れないため持ち続けなければならない」という状況が発生する可能性があることです。
頭金無しで不動産投資するため融資は借りれるだけ借りたい!という人もいます。ただ融資は借金なのでリスクがあることを頭に入れておいてください。自己資金を2割から3割用意して残りをローンでまかない、無理のない返済にしておいたほうが、後々の自分のリスクやプレッシャーも少なくなります。
また物件の運用実績があればフルローンも可能ですが、投資初めての人は返済能力が未知数なので金融機関も多くの金額を融資してくれません。
4.金融機関の探し方、条件の交渉
自分で金融機関を探す場合、色々な金融機関にあたる必要があります。探す方法はネット経由の直接電話や、地元の銀行ならばアポを取った後店舗に行って交渉する手も。
金融機関にも種類があります。
- メガバンク
- 地方銀行
- 信用金庫
- ネットバンク
- ノンバンク
- 日本政策金融公庫
それぞれの特徴は以下のようになっています。
・メガバンク
→全国規模で支店を展開している銀行です。融資の審査基準は厳しく、個人投資家は相手にされないことも多いです。金利などの条件は良いことが多いです。
・地方銀行
→県や市の名前がついている銀行です。審査基準はまちまちで緩いこともありますが、自分たちの営業範囲外(支店を展開していないエリア)の物件に関しての融資はまず通りません。
金利はメガバンクより高いことが多いです。
・信用金庫
→地方銀行よりも対象エリアが狭く、特定の市にだけ融資をする信用金庫もあります。条件はそれほど良いとはいえませんが、そのエリアに住んでいる人であれば、融資をしてくれるかの性はぐっと高まり、個人投資家でも相手にしてくれます。
・ネットバンク
→店舗を展開していない分金利が安めです。ただし融資の審査は非常に厳しく、面談で事情の説明の機会もセッティングしてくれないことが多いので、よほど物件の条件が良くない限りは融資を受けられません。
・ノンバンク
→金融機関以外で個人に融資を行ってくれる会社です。審査は甘めなことがありますが、金利はこの中では最も高い傾向にあります。最後に頼るところになるでしょう。
・日本政策金融公庫
→政府系の金融機関です。返済期間は最長で20年と短めですが、金利はここで上げた中でも最も低く、若年層、高齢者、女性はさらに優遇策があります。個人投資家でも3年ほどの実績を作っていないと融資を利用できませんが、条件がとにかく良いので、実績を積み重ねたら積極的な活用を狙いましょう。
実際の金融機関の投資用ローンの融資額、審査が通るかは借り手、物件双方の「属性」が見られます。
借り手の「属性」とは借り手の職業、収入、年収、借金の有無など要は貸したお金を返済する力があるかです。また過去に融資を受けて返済実績がある。担保となる物件や現金を所有しているならば5000万円や1億円といった高額の融資を受けられます。
物件の「属性」とは物件の価値です。担保価値が高く資産価値が目減りしにくい物件かが見られます。具体的はRC造の築浅マンション、良い立地の土地付きアパートなどは需要もあり価値が下がりにくいと見られます。また駅チカなどであれば入居率も高く収益率も良いので価値は高く見られます。
逆に先資産価値が低下しそうなエリアの物件、特に駅から離れた場所の物件では中々融資が受けられないでしょう。
駅前のワンルームマンションは融資が受けやすいため、投資初心者が最初にやるのに向いていると言われる理由でもあります。(実際に儲かるかは別な話)
5.重要事項説明と売買契約の締結
資金計画が固まったら不動産屋にその結果を伝えて売買契約に入ります。この辺りの手続きは不動産屋が仲介に入って進めてくれるので特に自分ですることはありません。
ただ申し込みに必要な書類などは自分で揃える必要があります。
書類を揃えて不動産屋に送ったら不動産会社の宅地建物取引士有資格者、買主である自分、売主である元オーナーの立会いのもと3者で重要事項説明を行います。ここで物件の価格の1割の手付金(要は契約金)や不動産屋の仲介手数料の半額などのお金を支払います。
買主は以下のものを不動産会社の指示通りに用意します。
・印鑑(実印)
・手付金
・印紙代(手付金と一緒に不動産会社に支払う)
・本人確認書類(住民票、印鑑証明書、運転免許証のコピーなど)
・銀行通帳のコピー
ちなみに手付金はこの段階で支払いますが、物件購入後にローン融資が受けられず契約が破棄されたらどうなるのでしょうか?この場合買い付け時にローン特約を結んでいれば、購入できなかった場合でも返金されます。
また先方の都合で購入がキャンセルになった場合には返済されるだけではなく、上乗せされて返ってきます。ただし自分の都合でキャンセルした場合には、手付金は返ってきません。
6.ローン審査の通過と支払い
ローンの審査が無事通過したら融資金融機関でローンの契約を行います。ここではローンの返済金利など各種条件などの説明が行われます。
一回でもローン返済の遅延が発生すると条件が一気に悪化する契約も多いです。どの口座から引き落とされるのか、毎月何日までに用意するのか条件面を確認しましょう。その他にローンの融資手数料や保証料などの説明も行われます。
ローン審査がおりたら自分の口座にお金が振り込まれるので、そのお金を売主の口座に入金すれば購入は完了です。この手続きも不動産会社の担当が進めてくれるので、次に何をしたら良いのか、と迷うことはありません。
7.物件の受け渡し
お金を支払った後には物件の受け渡しを行います。ここも不動産屋が進めてくれるので、指定の日時に物件に行くだけで良いです。物件の状態を最終的にチェックしその場で鍵の受け渡し行いましょう。
また物件に関する書類の受け渡しもこの段階で行われます。書類としては以下のものなどがあります。
・登記簿謄本
・間取り図や平面図などの建物図面
・各種権利書
・修繕履歴表
・管理経費表
・設備などの点検報告書
・現在の住人との賃貸契約書
・設備のリース契約書
・管理会社との契約書
これらの書類は自分がその物件を売る時にも必要になるので必ず保管しておきましょう。
8.不動産管理を任せる管理会社の選定
不動産投資は賃貸物件なので物件購入後の実際の運営や客付けを任せる管理会社の選定も行う必要があります。
ローンの審査中に並行して管理会社の選定を終える人も、物件が自分の所有物になってから管理会社を選ぶ人もいます。タイミングは人それぞれですが遅くとも重要事項説明を受ける時点で方針は決めておきましょう。
購入時にオーナーチェンジ物件として入居者がいるなら、既存の管理会社があるはずなのでそのまま引き継ぐのが良いでしょう。特に面倒な相談をすることもなくスムーズに物件運営に入れますし、既存の入居者も戸惑うことがありません。
ただし管理会社の情報を見て管理手数料が相場である5%よりも非常に高い、24時間相談のホットラインがないなど不便さや問題があるなら、見直しを図るか条件交渉を行いましょう。
不動産物件の購入から融資そして受け渡しまでの大まかな流れは以上です。
初心者は経験値が少ないのでリスクが少なく問題が起こらないよう、金融機関は不動産会社の斡旋を受けた方がいいでしょう。また管理会社も元の会社を選ぶのが一番です。
また融資額も最初からフルローンで購入しようと思うよりも、無理なく毎月の家賃収入の半分程度のローン返済額に収まる程度の融資金額、返済期間設定にしておきましょう。